伸ばした髪は、

裁つ為に。
あれは切り落とすために伸ばされた髪だった。


隠し扉を探したら裂け目を見つける。
僕もやっとあなたの罠に足を落とせた。


本当はなんて言葉は何処にもない。
其処にあるなら、此処にはない。
此処にあるなら何処にもない。


僕という人格が病である事を望まれて、
自分でもどうなのだろうと、判断がつかなかった。
病であると願われて、それが安堵になるなら、それで構わなかった。
本当の所は僕にも分からない。
精神なんてレントゲンにも映らないものに、腫瘍があったとして見えない。
それでも不思議なのは、精神に障害がある事にしたい意図。
それによって得られる安堵。
僕の思考や性分が、異常である事を望まれる。
その方が良いのだろうか。家族にとって、僕にとって。
誰かにとって最良の選択であるなら、僕は違和感を覚えないと思う。
ただ、異常ではないかも知れないという考えがあって、後ろめたい。
精神に障害など無いかもしれないのに、その振りをするのかと。
僕は他者にも自分にも、平穏である事を望む。
演じてそれが得られるなら、僕は演じるべきなのかも知れない。


少なくとも、父にとって娘は異常であってはならない。
母にとって娘は異常でなくてはならない。
弟にとって姉は怠惰な姉でしかない。
僕にとっては、手放したいとだけ思う。どちらでも、何でも良いから。
家族の為に生きる必要は無いと誰かが言った。
同じ様に、自分の為に生きる必要も無い様に思う。


僕は僕に自分を説明する。理解を得たいからだ。
けれど理解は得られない。
自分にも理解されないので、僕も恐らく理解する事はないだろう。
それでも尚、説明と言い訳、講釈を並べ続ける。